ZOXのTRIKE化 Satoさんのレポート
【フレーム単体を見て】
当方の素人目ながら非の打ち所のない剛性と精度で、各部の加工も「プロなら逆にここまで丁寧にはやってくれないだろう。」というレベル。頭が下がります。
各部材、自転車のレベルを超えてモーターサイクルに近いような強度設定に見える。その分重くはなってるのだろうが、こういう初物かつ一品製作では、強度的な不安は一切ないというのはとても大事なことだと思う。
【組み上げてみて】
このガッチリしたフレームを華奢なリヤフォークの先端に取り付けるのはちょっと不思議な感じではあるが、取り付けてしまえば全体には予想以上にバランスの取れた外観になった。リヤ回りがスカスカのZOXの本家モノよりもいいと思う。
ホイールをワンタッチで外せるのは、ものすごく便利。
前を持ち上げて直立させて動かすデルタトライク的取り回しは、家からの出し入れにすごく便利、というか当家の場合これができないと自室から外に出せない。^^;
【走行してみて】
走行感は、思いのほか軽い。試乗したことのある市販トライクよりも軽いような気もする。キャンバーもトーインもついてないおかげか。
前輪駆動ゆえに舵角が制限されるうえにリーンもできなくなるので小回りが効かないかと思いきや、ゆっくり走っても転ぶ心配がないので、二輪状態よりもむしろ取り回ししやすい。
ただ、路面の左右の傾きに大きく影響される。路肩等で車体が傾く→傾いた方にステアリングが切れる→傾いた方に加速しながら曲がっていく、という挙動に対して早めに当て舵して修正しないと慌てる羽目に。乗っているうちに慣れてきたが、自分自身が路面の傾きに対して非常に敏感になったことに気づいた。車椅子ユーザーは日常こういう気の遣い方をしているのだろうなあ、と新たな発見だった。
また、内側後輪はいとも簡単に浮く。急ハンドルを切らないことと、コーナーではしっかり減速することが必須。
上記2点いずれも、600mmという狭いトレッド幅とそれほど低くはない重心(シート高35cm)からすると致し方ないと思う。小生のSフレームより 5cm程度着座位置の低いフゥさんのZフレームでも同じようなインプレだったので、このトレッド幅のまま上記弱点を克服しようとすると、リーン機構を組み込むしかないような。
しかし、この幅の狭さのおかげで、地元の自転車道の60cm+αの幅の車止めは気をつけさえすればほとんど減速の必要もなく通過できる。
前輪駆動の故か、タッドポールトライクでよく聞く「踏み込むと蛇行する」という現象は現れない。
ところが、ハンドルから両手を放すとハンドルが振れ出してだんだん増幅するという現象が発生。脚を停めていても同じ。フゥさんのところでは発生しないようなので、小生の固体に特有の原因があるようだが、色々と試してみても結局原因は不明のまま。しかし、ハンドルに手を添えてしまえばそれで治まるようなものなので、実用上は問題にならない。とりあえず一種の珍現象と理解している。
停まって降りるとどこに転がるかわからないので、パーキングブレーキは必須だと実感。(ブレーキレバーをバンドで締めるのはけっこう面倒。)
【車椅子ハブのドラムブレーキ】
普通の2in1アダプタで引いてる間は、引きは重いわ恐ろしく効かないわでたいへんだったが、倍力装置を作っていただいて組み込むと、引きは普通になり、効きの方も「これならブレーキと呼んでやってもいい」レベルにはなった。
ただし、とてもじゃないが前輪に使えるような制動力はないので、このへんはそもそもが車椅子のパーキングブレーキとして設計されている限界かな、と。
【フレームの回転→軸ずれ】
当初のトライクフレーム固定キャリアに荷物を積むと、トライクフレームが後ろに回転し、シャフトがリアエンドから外れる方向にずれた。荷物を載せる以外にも、例えば急な上り坂でリアブレーキを引いて停車していると同様のことが起こる可能性はある。
というわけで、トライクフレームとリヤフォークの双方に固定されて、トライクフレームの回転防止となる改良版キャリアを作っていただいて、症状はかなり緩和した。
【搬送能力】
リヤエンドから伸びているシートステーが邪魔で、後輪の間のスペースを生かしきれないのが残念だが、残ったスペースでもママチャリの前カゴと同等のレベルで物が載るのはありがたい。
【今後の想定用途】
下りのカーブが怖いので、峠には持ち込めない。
搬送能力を生かしてお買い物用、というのは現実的に最有力。
安定性を生かして、トレーラー等の牽引車両とするのはかなりいいような気がする。
積雪路面とか凍結路面で走らせると面白そう。転ぶ心配はないし、路面ミューが低ければ、内輪が浮く代わりにスライドしまくってくれるのではないかと。
【妄想】
リアフォークから作り直して、この幅でリーン機構つきの前輪駆動デルタトライクにできると、性能的にも実用的にもかなりいいモノになるのではないか、と思ったり。
最後に、何をおいても、手数のかかった良いものをありがとうございました。>Telavivさん
「極力前向きな方向で」というリクエストにきっちり応えた、素晴らしいレポートざます。